2026/05/08 16:55



ブロンプトンは輪行しやすいと評判だし、実際に使ってみて僕も同じ意見。輪行の準備はカップヌードルを作るより早くて、車内で肩身の狭い思いをしなくて済むほどコンパクトになってくれるから、面倒ごとが大嫌いで小心者の僕には頼もしい存在だ。


だけど完全無欠の輪行号かと問われると即答できない。


だって、重いから。


日本の駅構内でもコロコロを使えたら、ブロンプトンの重さなんて取るに足りない問題だったはず。ブロンプトンのポテンシャルを発揮しきれないことがもどかしい。いじけていても仕方がないけど、羽があるのに飛べないような。そんな気持ちになる。

ただ手をこまねいているわけにもいかないから、少しでも輪行をラクにできるよう試行錯誤を繰り返して、3つのアイデアが生まれた。完全無欠かはわからないけれど、重さに対して及第点の答えは出せたと思う。

1.肩と腕で担ぐこと(肩紐と持ち手付きの輪行袋を使う)
2.肩と腕で担ぐこと(肩紐無しの被せるタイプの輪行袋で可能)
3.前カゴにキャスターを付けてキャリーカート化すること

1はありきたりというか、オーソドックスな正攻法。2の方法はシンプルながら効果が大きくてとても好き。3の方法はまだ荒削りだけど効果は抜群。フロントバッグより前カゴ派という人に試してみてほしい。

肩紐付きの輪行袋を使う


unBIKE(アンバイク)のリンチョ60は被せるタイプの輪行袋で、肩紐なんて一切ない。基本はフレームを鷲掴みにして運ぶことになるから、肩紐付きの輪行袋と比べて身体への負担が大きい。輪行なんて二度としたくないと思うほどしんどかったこともある。


とある冬のサイクリングでの出来事。カラッと乾いた青空が気持ちのいい日だった。PUDOのロッカーに荷物を預けたあと、県道のくせに車が通れないという変な峠に向かった。電波も届かない山奥で、すっかりハイキングコースと化している。あちこちでイノシシが道を荒らした形跡があり、白骨化したナニかも落ちていた。

コーヒーを淹れてのんびりと下手なスケッチでもする予定だったけど、野生動物の気配が濃くて怖いからとっとと引き返すことにした。先へ進まなくていい安堵感で気が抜けたせいか、あろうことかブロンプトンで山道をゴリゴリ走ろうと試みる。それから早々にパンクをして、修理キットもなければ電波もなかった。

街まで歩いてタクシーを呼ぶか悩んだけど、他人の車が苦手だから自分で走ることにした。1時間に1本しかない電車に間に合わせるためにとにかくダッシュ。ほとんど信号に引っかからないという幸運に恵まれ、ギリギリで駅にたどり着く。ホームで発車のベルが鳴っている気がするけど、とにかく急いでブロンプトンをリンチョ60に仕舞う。こういうときゆったりサイズの被せるタイプの輪行袋は助かる。

しかしあと30秒というところで間に合わなかった。向かいのホームで談笑する高校生はマフラーを巻いているし、大人はコートの襟を首までたくし上げている。いつの間にか雨も降ってきた。僕はひとりだけ汗ダラダラ、足ガクガクでなんとも間抜けな出で立ちだった。自販機で買ったあたたかいコーン茶を片手に1時間電車を待った。


この輪行がほんとうに大変だった。輪行なんて二度とするかって悪態をつきながら、引きずるようにブロンプトンを運んでた。

リンチョ60を作る前は、これまた手作りの肩紐付き帆布製輪行袋を使っていた。クラシックなブロンプトンには天然素材を合わせたかったし、当時は納車したてで輪行する機会も多くて、タフな輪行袋が必要だったという理由もある。いまどき帆布の輪行袋を使うというのもおもしろかった。

対象的な両者を使って思うのは、やっぱり肩紐があるとラクだということ。

10kgオーバーの鉄の塊を鷲掴みにして運ぶのは骨が折れる。対して、肩紐付き輪行袋ではブロンプトンの重さをそこまでネガティブに感じたことはなくて、むしろ快適な輪行体験という印象のほうが強い。実際、ブロンプトンの輪行力に疑問を抱き始めたのは肩紐のないリンチョ60を使い始めてからで、やっぱり肩紐の効果は絶大だ。

輪行袋の下部に持ち手がついた製品もある。これなら肩と腕で負担を分散できて、さらに快適になる。輪行袋自体に強度が求められるから重くかさばるという欠点はあるものの、快適に輪行をしたいなら検討する価値はある。

ハイキング用のリュックサックだって、各社ショルダーハーネスの厚みを工夫したり、ウエストベルトの位置を調整したり、様々な工夫をして背負い心地の向上を目指している。軽量化も大事だけど、どうやって運ぶかということも大切で、それは輪行でも同じことだと思う。

ブロンプトンにカスタムを施して、肩紐がない輪行袋でも肩と腕で担げるようにする


輪行をラクにしたいなら、肩紐と持ち手の両方がついた輪行袋を選ぶのが手っ取り早い。

だけど困ったことに僕は肩紐が大嫌いだ。

輪行袋に縫い付けられていても、車体に後付けしても、どうしても鬱陶しく感じてしまう。普段使いとハイキングと兼用しているリュックサックだって、ウエストベルトやバンジーコードが一切付いていない昔ながらのシンプルなデイパックを使っているし、毎日使うコーヒーカップには持ち手がない。ボールペンのキャップは捨てた。

僕にとって、シンプルであることは機能の1つで、Simple is functionだ。だからこそリンチョ60は肩紐を使わないという前提で設計した。

けれど、想定していたより肩紐のない輪行は辛かった。

肩紐をつけてしまえば解決するし、重さを我慢するのも1つの方法。幸福のパラドックスのように、道具にこだわりすぎるのもかえって息苦しい。積極的に妥協をすることもまた合理的なのかもしれない。けれどもし肩紐のないリンチョ60でラクに運べたなら、僕にとってこれ以上ない理想の輪行袋となる。


部屋で四角く折りたたまれたブロンプトンを眺めて、ひたすら考え続けた。

アイデアを出すのは楽しい。考えすぎて寝付けなくなることはよくあるけど、そんなときはノートに「案は明日考える」と書いて、脳から一時的に削除する。翌朝、また考える。そんなことを毎日続けていると、諦めて手頃な案で妥協したくなることもある。それでも理想を追求し続けると、ビリビリッと脳に電気が走る瞬間が訪れることを知っている。


シートポストを引き出して、サドルに肩を掛けるのはどう?


ビリビリきた。

これなら肩紐がなくたって、肩で担ぐことができる。


シートポストを引き出すと折りたたみのロックが外れてバラけてしまうから、リアホイールとメインフレームをありあわせの結束バンドで固定する。これで折りたたみ状態がロックされた。初めて試したときは担ぎにくさを感じたものの、サドルの高さや左右の向きを調整することで快適に担げることがわかった。車体が前後どちらを向いていても問題なく肩にかけることができる。

予想外によかったのは、肩だけでなく腕で補助できたこと。車体を手で掴むことができるから、肩に負担が集中しない。肩紐、下部に持ち手がついた輪行袋と同じコンセプトの担ぎ方をストラップ1本で実現することができた。シートポストの高さを調整できることが、まるで肩紐の長さ調節機能みたいでワクワクした。ブロンプトンの折りたたみが優れているからこそだった。


だけど、2つの問題があった。1つは折りたたみをロックするためだけにストラップを持ちたくないということ。2つ目はシートポストを伸ばした分だけ大きな輪行袋が必要だということ。

ストラップを持ちたくない問題は、シートポストを伸ばしても折りたたみが保持されるロックパーツを発見して解決した。ストラップと違ってシートポストを伸ばし切ることはできないけど、管理の煩わしい小物が減るほうがありがたい。お金で解決するのは好きじゃないから当初は自作を試みたけど、思った以上に骨が折れそうで買うことにした。AliExpressで数百円だった。

輪行袋のサイズ問題もあっさり解決した。リンチョ60は被せやすいようにブロンプトン向けにしては大きめに作ってあったから、シートポストをある程度伸ばしてもしっかりと車体を覆ってくれた。ほかのブロンプトン専用輪行袋はジャストサイズ過ぎて対応できないかもしれないから、リンチョ60以外だと、いっそのことロードバイク向けの縦型輪行袋を選んでみるのもいいと思う。

僕の輪行スタイルはロックパーツとリンチョ60の組み合わせに落ち着いた。合わせて68g。

カゴにキャスターを付けてキャリーカート化する


肩と腕で負担を分散するとラクに運べる。とはいえ、重さが魔法のように消えるわけじゃない。

やっぱり最強なのはコロコロを使うことだと思った。鉄道会社にルールを改定してもらうことは現実的ではないけど、輪行袋に包んだブロンプトンを台車に載せることはできる。

さっきの辛い輪行体験をする前から、台車を活用して輪行を快適にできないか考えたことはあった。キャリーカートを使えば簡単に実現可能だし、木の板にキャスターを取り付けるだけでもいい。だけど、どうしてもそれをやろうとは思えなかった。

輪行のためだけに大層なモノを持ち運びたくなかったし、使用頻度が少ない上に絶対に必要でもないモノを家に置きたくなかった。ミニマリストではないけれど、ミニマリズムに共感することは多い。ストラップ1本ですら嫌がる人間だから、ただの台車なんて持つわけがなかった。

せめて、ほかのことに有効活用できないと。

たとえば、台車をリアキャリアに乗せることで天板が拡張されて荷物を積みやすくなるとか。あるいはコロコロ付きの背負子にブロンプトンを載せて山登りができるだとか。

けど、どちらも決め手に欠ける。活用シーンが限定的過ぎて、結局は無駄な荷物のように思えてしまう。

スケボーに載せることも考えた。サイクリングとクルージングを同時に楽しむことができる。ただマナーとしてアウトかもしれないし、結局スケボーの練習をサボっていてまともに乗れないから試したことはない。


・台車は輪行のためだけでなく、ほかの用途に積極的に活用できること
・軽量であること
・家で保管するときも自転車に積載するときも邪魔にならないこと
・ブロンプトンのコロコロより高性能なこと
・ブロンプトンの輪行準備の手軽さに影響を与えないほど台車のセットアップが簡単なこと

もし僕がなにか台車を用意してコロコロ輪行をするのであれば、これらの条件を満たしてくれないと困る。でないと使う気にならない。

改めて文字に起こすと厳しすぎる条件だ。

けど、あったんだよね。


灯台下暗し。カゴ。

カゴにキャスターを付けて、キャリーカートにしてしまえばいい。


ブロンプトンといえば専用のフロントバッグだけど、僕にはどうも合わなかった。いい道具というのはわかるんだけど、フレームが固くて背負いにくかったり、床に置く時にフローリングを傷つけないよう気を使ったり、何気ないところで扱いづらさを感じる。だからもっぱらカゴ(WALD137)に、好きなバッグを放り込んでいる。

本来、カゴは輪行中になんの役にも立たないけど、もしキャリーカートととして使えるなら、走っているときは荷物を、輪行中はブロンプトンを載せることになる。つまり、捨てるところがない。カゴはひっくり返すとテーブルになってあっという間にカフェスペースができあがるし、カゴってもしかしたらとってもULハイキング的な道具なのかもしれない。

思いついてすぐ、ホームセンターまでキャスターを買いに走った。プラスチックの車輪なら軽かったけど、転がした時に大きな音がするのは気が引けるからゴム製にした。カゴとキャスターは細い結束バンドで固定。イイ感じ。

セットアップは、ワンタッチで前カゴを外し、ブロンプトンを載せて、いつも使っているワイヤーロックで固定するだけ。

つまり実質キャスター4個、160gのキャリーカートが完成した。軽量輪行袋のリンチョ60を加えて、220gで転がし輪行ができるようになった。先の条件もすべて満たしている。


実際に輪行で使ってみて改善点はあるし、まだ粗削りの方法だ。初めて試した時、リンチョ60がカゴに引っかかってプチプチと破けた。だけど、かなり手応えがあった。

収まりが悪い代わりに、カゴからはみ出た側は高さが生まれて手を置きやすいし、カゴの側面に車体がつっかえてくれて押しやすい。固定がゆるいから階段で持ち上げる時は要注意だけど、点字ブロック程度ならさらっとクリアできる。ちいさな駅で使うかはわからないにしても、構内を長く歩くような大きな駅では活用していこうと思っている。

カゴをキャリーカート化だから、キャリーカーゴと名付けた。